EICニュースレターNo.13 |
本号の目次
|
1999年8月17日トルコ北西部の地震(Mw7.4) |
余震域は本震の震央から東西へ伸び,約200kmの範囲に広がる.最大4.9mの右横ずれ変位を示す地表地震断層が長さ110kmにわたって出現した.最大410ガルの水平加速度がAdapazariで記録された. イズミット湾では,地震直後に最大4mの津波が発生した.海岸が沈降し,海辺の建物が浸水した. トルコ北部には,ほぼ東西に1200kmにわたって北アナトリア断層が走り,今回の地震はその活断層の西端付近で起きた.この断層はトルコをのせたマイクロプレートと北側のユーラシアプレートの境界であり,プレートテクトニクスでいうトランスォーム断層に属する.北アナトリア断層の動きは右横ずれであり,今回の地震も同じ右横ずれの断層運動を示す.この断層沿いでは過去に被害地震が多発している.1939年にはこの断層の東端でM7.8の地震が発生し,犠牲者は3万人を超えた. 北アナトリア断層では,1939年の大地震が断層の東側で発生してから,続いて42年,43年,47年と震源が西に移動する形でM7クラスの地震が起こった.さらにその西側で57年と67年にM7クラスの地震が起こった.断層の西端付近では過去に大地震が発生していないことから,大地震の発生が懸念されていた.今回の地震はまさにそこで発生した. 情報センターは地震研のホームページにトルコの地震特集を開設しています.[阿部 勝征] |
8月17日の余震分布(NEICによる) |
J-arrayによって採集されたトルコ・イズミット地震の波形例 |
宇都徳治先生の「世界の被害地震の表」からトルコ地域における過去の地震(1950年以降,死者千人以上)をリストしたものです. |
EIC地震学ノートより抜粋 |
最近起こった地震の中から、トルコの大地震と和歌山県北部の地震についてのレポートです。(文責:菊地・山中) |
EIC地震学ノート No.62s August 26,99 遠地実体波解析(改訂版)----------------- 8月17日トルコの地震(Mw 7.4) -------------------------------------------- 震源諸元: ボアジチ大学地震研究所による震源情報は次の通りです。
データ処理:IRIS-DMCの広帯域地震記録(P波上下動15, SH波5)を用いました。観測点分布は良好です。主破壊に加えて、約40秒遅れの破壊が得られました。 結果:ずれ破壊の時空分布を図1に示します。主破壊の震源パラメータは次のとおりです。 走向、傾斜、すべり角=(88, 80, 179) (東西走向の右横ずれ断層) 地震モーメント Mo=1.8x10e20 Nm (Mw = 7.4) 破壊継続時間 T = 12 s 深さ H = 12km 主破壊の断層長(非対称双方向伝播)約 60km 食い違い D = Mo/μS = 3.3 m (μ=46GPa) 応力降下 Δσ = 2.5 Mo/ S**1.5 = 11 MPa 解釈その他:余震の広がりは震源(初期破壊点)から両側にそれぞれ100kmほどに及んでいるのに対し、上で得られたずれ破壊(アスペリティ)の範囲は60kmと狭い。余震とアスペリティ領域が一致しないことはよくあることですが、どの範囲の断層が動いたかは、今後の地震活動を考える上で大変重要なポイントです。現地観測(余震、地表調査、測量など)による注意深い検討が待たれます。 EIC地震学ノート No.63 August 23,99 遠地実体波解析(改訂版) --------------- 8月21日和歌山県北部の地震(M 5.5) ------------------------------------------- 概略・特徴: 8月21日早朝、近畿地方を中心に地震があり、和歌山、奈良の両県で震度5弱の揺れを記録しました。気象庁による速報震源は次の通りです。
データ処理・結果: IRIS-DMCのホームページから取った3地点のP波上下動を用いて解析しました。主な震源パラメータは次の通りです(図2)。 走向、傾斜、すべり角= (350, 90, -55) 地震モーメント Mo=6.0x10**17 Nm (Mw = 5.8) 破壊継続時間 T = 2 s 深さ H = 60 km 解釈その他:地震研究所観測センターの震源分布によると、余震は本震から南南東方向に並ぶように見えます。潜り込むフィリピン海プレート内部で、東南海地震と南海道地震のブロック境界の断裂に関係した地震と思われます。 |
EIC Cray Origin 2000 システムの変更について |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
すでにメールにてご案内のように,8月10日〜11日に,下記のようなシステム変更(バージョンアップ)を行いました.これまでに原因不明の障害が何度も発生していたことから,コンパイラやライブラリも含めてシステムソフトウェアをほぼ全面的にバージョンアップし,CPUも新しいモデルにグレードアップしました.これまでのプログラムは,再度コンパイルしてご利用頂くことをお勧めします. 主なシステム変更(バージョンアップ) 1) OS IRIX 6.5.2m --> 6.5.4.m 2) CPU R10K(250MHz) --> R12K(300MHz) ※ SPECfpで約1.4倍のアップです. 3) Foutran77 Foutran90 C C++ 7.2.1 --> 7.3 ※ 7.3からCコンパイラもOpenMPに対応. 標準コンパイラオプションを,R12K用に変更. 4) SGI科学技術計算ライブラリ SCSL 1.0 --> 1.2 5) バッチシステム NQE 3.3.0.6 --> 3.3.0.15 ※ qsubコマンドが更新された. 6) MPI(メッセージパッシング) 1.2 --> 1.3 7) OSに付属の Netscape が,4.51-JFG にアップ. なお本センターでは,今回のシステム変更に伴い,以下のホームページの情報を大幅に改訂しましたので,ご活用ください. 「EIC計算機システムの利用法(マニュアル)」と「EIC計算機最適化および並列化プログラミング法」 http://eic.eri.u-tokyo.ac.jp/ 「EIC計算機システム関連のご案内」 http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/ また不明の点は,eic_staff@eri.u-tokyo.ac.jpまでお問い合わせ下さい. EICのジョブクラスの変更について8月11日より,下記の「新しいジョブクラス」にて運用されております.今回のジョブクラス変更のポイントは,短時間ジョブ用はクラスA(CPU=4迄)のみとし,長時間ジョブ用のジョブクラスを並列化の程度によってクラスBからEまで4種類用意した点です. クラスBは並列化されないジョブ用で利用CPUは1です.クラスCは並列化率60〜80%程度のジョブ用でCPU=4迄,クラスDは並列化率80〜90%程度のジョブ用でCPU=8迄,クラスEは並列化率90%以上のジョブ用でCPU=16迄利用可能となっています. 新しいジョブクラス(1999.8.11〜)
注: CPU時間 =ジョブ全体のCPU時間の上限 経過時間=CPU1台の使用CPU時間の上限 user limit =1ユーザが同時に実行できるジョブの数 class limit=ジョブクラス内で同時に実行できるジョブの数 mpp limit=1ジョブで使えるCPUの最大数 お願い メモリ制限はありませんが、実メモリは32GBしかないので1ジョブ当りのメモリ使用量は最大5GB以下でご利用下さい。 なお,以上のようなジョブクラスの変更に伴い,並列化CPUの数 MP_SET_NUMTHREADS のdefaultを 4 から 1に変更しました.このため,環境変数の MP_SET_NUMTHREADSを指定しないと1CPUで実行されてしまいますのでご注意ください. |
地震雷火事爺 一般公開で情報センター恒例の『クイズ』マニア編の題材を考えた。「怖いもののたとえに、"地震雷火事親爺"ということわざがある。この出典はつぎのどれか。(回答群)」という問題である。我ながらうまい問題だと自画自賛したまではよかったが、肝腎の正解がわからない。古語辞典、言泉などいろいろ調べたが、結局わからない。苦しまぎれに図書室に飛び込んだ。これが良かった。後日、柴尾掛長から、「参考資料が見つかりました」との知らせがあった。つぎの2点である。 【太平新曲(文政2年(1819))】に曰く:"貴様今年実に怖い事、地震神鳴火事爺・・・" 【花暦八笑人(嘉永2年(1849))】に曰く:"地神(ちじん)雷り、トいひながら酒のさかなのしほやきを見て、鰺(あじ)、親父か・・・" これが「地震雷…」の起こりかどうかはわからないが、少なくともこの時代に使われていたことの証しではある。地震研図書室の皆さん、ありがとうございました。(MK) |
8月2,3日の一般公開での情報センタークイズコーナーの集計結果です。 挑戦者:1,119人 (延べ) 合格者: 68人(基礎編:57人,マニア編:11人) 合格率は2日目の方が、問題数が少ない(1日目:8問,2日目:6問)ためか、少し良かったようです。合格者の年齢は10代が最も多く、最高齢は60歳代の方、10歳未満も3人合格されました。(津田) |