目 次 


地震・火山現象と地球潮汐との関連性について(鶴岡 弘)

EIC計算機システムの利用法初心者講習会(鶴岡 弘)

計算機利用状況(鷹野 澄)

RAの部屋(2003年度計算機RA報告)(中東和夫)

EIC計算機利用マニュアル(鶴岡 弘)




 地震・火山現象と地球潮汐との関連性について

最近,地震・火山現象と地球潮汐との関連性についての報告が多くなされるようになってきました.四国直下の低周波微動の発生,三宅島での地震活動,私も世界の大地震の発生や,富士山の低周波地震活動との関連性を解析していますが,少なからず関連があるように見えます.非常に興味深いことは,これらの関連性が時間・空間的に変化していることです.
 地球潮汐というと少し重たく聞こえるかもしれませんが,月や太陽との関連というと馴染みやすいかもしれません.地球潮汐というのは,簡単に言うと,月および太陽の引力によって生じる起潮力を受けて地球が変形する現象をいいます.例えば,地球潮汐によって地表面は±20cm程度の上下変位を,地球内部には応力にして数十hPaの変化が生じています.なお,地球潮汐は主に約12時間の周期をもって変動する現象です.
 地震・火山現象だけではなくてそのほかの現象と地球潮汐との関連について調べてみると,多くの事例を見つけることができます.海に棲む生物の活動は地球潮汐と関連している例が多く報告されています.例えば,カリフォルニアの海岸に生息するトウゴロウイワシは,満月のころの晩に産卵することが報告されていますし,カキは満潮時刻に貝殻を開く習性があるそうです.驚くべきことに人間の出産も満月や新月の時に多いという報告例があり,平均よりも1割程度増加していることが統計的に有意であるそうです.満月および新月のころは,太陽,地球,月の三者が一直線に並び潮汐力がもっとも高まるときになっていて,地球潮汐による変化量は非常に微小であるにもかかわらず生物に何らかの影響をもたらしているようです.
 最後に,私の最近の?研究についても紹介します.一つは大地震の発生と地球潮汐との相関関係です.これは,アリューシャン地域において1985/5/7に発生したMw=8.0の地震(=アンドレアノフ地震)発生の数年前からMw5.0以上の地震発生と地球潮汐との間の相関関係が高まり,その巨大地震発生後その相関関係がなくなったという事例です.このことは,地震発生と地球潮汐との相関を調べることによって長期的な地震発生予測が可能かもしれないことを示しています.もう一つは,1979年9月から2004年1月における富士山深部低周波地震活動と地球潮汐との関連性を調査した研究です.解析の結果,深部低周波地震活動は,地球潮汐による圧縮応力が高まっている時におこりやすく,また,深部低周波地震活動が高まった2000年11月から2001年5月にかけてその傾向が高まっていることがわかりました.富士山における深部低周波地震の発生メカニズムはよくわかっていないので,地震発生と地球潮汐との関連性を調査することによってそのメカニズム解明の糸口になるかもしれないと考えています.
 システムの性質がよくわからない場合に,既知の入力に対する出力を解析することによってそのシステムを理解することはよく行われる手法です.地震・火山現象もこれと同様に地球潮汐による微小な入力に対する出力(地震発生,火山の噴火,その他)を詳細に調査することによって何か新しいことがわかるのではないかと考えています.

 

「EIC計算機システムの利用法」初心者講習会報告

 Altix3700システムを中心にしたEIC計算機システムについて,例年同様に初心者講習会を実施しました.講習会はこれからEIC計算機システムを使いたい人を対象としたコースで,5月20日(木)13:30-15:30 に実施しました.講師は情報センターの鶴岡とSGI 竹嶋・松本が務め,講習会の内容は
・ システム概要
・ 利用者環境
・ eicのバッチジョブPBSとその利用法
・ 出力装置の利用法
・ プログラムの移植とバイナリデータの取り扱い
・ コンパイラと科学数値計算ライブラリ
・ アプリケーションソフトウェアの利用法
をデモを含めて行いました.
 講習会への参加人数は12名でした.システム更新から1年以上経っていることもあり,参加数は例年に比べて少なかったようです.なお,EIC計算機システムの利用法は
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/
で随時更新していますので,そちらを適宜ご参照ください.


講習会の様子

 

 

 

 

プログラムの並列化度を求める

eicで複数CPUを利用してプログラムを実行する場合には(つまりBジョブ以外のジョブクラスでプログラムを実行する場合),その並列化度に注意する必要があります.自動並列化オプションでプログラムをコンパイルして,ジョブを投入した場合でも複数CPUが有効に活用されない場合があるためです.これを簡単に調べる方法をご紹介しますので,ジョブを投入後必ずチェックしてください.
% qstat
を実行して,(Elapsed Cputime)/(Elapsed Walltime) の比を計算します.並列化度はこの値が利用しているCPU数に近ければ“高い”ということになります.

 


EIC(Altix 3700)並列計算機の利用状況

 昨年の3月より利用開始したSGI Altix 3700並列計算機の1年間の利用状況をお知らせします.
 図1は、毎月のCPUの利用状況です。図1aは、並列計算サーバeicp(64CPU)、高速計算サーバeich(32CPU)、フロン トエンドサーバeic(12CPU)のそれぞれの、また図1bは3台全体のCPU利用率です。
 機種更新によって計算能力が大幅にアップしたにもかかわらず、昨年の3月に稼動して2ヵ月後には、もう並列計算 サーバeicpの月間利用率が50%を超えるなど、予想を大幅に超えて利用されています。


図1a eic並列計算機のシステムごとの月別CPU利用状況

図1b eic並列計算機のシステム全体の月別CPU利用率
 図2は、月に1回以上利用した実利用者数と、そのうち、月100時間以上CPU時間を利用したパワーユーザの数ですが、 更新前と後でほとんど変化がありません。このことから、機種更新で計算機の性能が6〜10倍に向上した分、一人当 たりの計算量が6〜10倍に大型化したことがわかります。おそらく更新前の計算機では処理できないような大型計 算の潜在的需要があり、更新を機にそれらがドッと投入されたものと推察されます。
 混雑のため、一部の大口利用者には、利用自粛をお願いしたり、32CPUまで利用可能なFジョブクラスのサービスを やむなく停止し16CPUまでのEジョブクラスを増やすなどの対策を行いました。しかし、導入して1年目でもう能力 不足の心配をすることになろうとは、思ってもいませんでした。


図2 eic共同利用計算機の実利用者数とパワーユーザー数


 

 

 

 

 〜 科学新聞4月16日号に紹介されました 〜

 本センターの並列計算機は、地震や火山に関する研究のための全国共同利用計算機として、全国の多くの分野
の教官や大学院生など様々な方に利用されています。このたび、その活躍が「科学新聞」4月16日号に掲載さ れました。
 同じページに、本多先生と古村先生のご研究も紹介されています。まだ、ご覧になっていない方は、地震研 5階の廊下に掲示してありますのでご覧下さい。


 

★★自動並列化支援ツールVASTの導入(予告)★★

 FORTRANソースプログラムを解析して、自動的にOpenMPディレクティブを挿入する自動並列化ツールVAST/toOpenMPを近く 導入する予定です。これまで、FORTRANの自動並列化で十分な並列化性能が得られなかったプログラムをご利用の方は、一度 VASTを使ってみてください。VASTの導入時期については、メールでご案内する予定です。


RAの部屋(2003年度計算機RA報告)

 地震研での研究・教育活動におけるコンピュータ利用環境を向上するため、「コンピュータ道具箱」という所内限定ページ (http://wwinside.eri.u-tokyo.ac.jp/RA/indexj.html)がRAと情報センターによって作成されています。2003年度は長井と 中東の二人のRAにより、このページの整理、管理を行ないました。特にMacintosh関連のページについては、これまで担当者がいな かったこともあり、数年ぶりの改訂を行ないました。
 新たな追加としては、現在地震研の第1,2,3会議室では無線LANが使用できますが、その設定方法紹介のページの作成や、 Eudoraのセキュリティーホールに関するページ、Windows Up dateの方法についてのページなどを作成しました。各OSについての 関連情報のページへのリンク集も作成しました。
 最近はコンピュータウイルスによる被害が所内でも起こっています。WindowsもMacintoshもコンピュータを最新の状態にシ ステムアップデートしておくことによって、ある程度は防げますので、こまめにシステムアップデートをするようにお願いし ます。また、情報基盤センターにはウイルス対策ソフトウェアの学内ライセンスのページがあります。「コンピュータ道具箱」 のページからリンクを作成していますので、ウイルス対策ソフトを導入されていない方はご利用してみてください。

 


 EIC計算機利用マニュアル

SGI LX3700の利用マニュアルが 
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/
にあります.このマニュアルの中では,バッチジョブスクリプトの作成方法・バッチ投入の仕方など計算機利用の基礎から,プログラム並列化の性能解析まで幅広く記述されています.マニュアルはほぼ完成しましたが,変更があった場合には適宜更新しています.計算機利用の際に疑問が生じた場合にはまずこれらのページで確認してください.メール等でも随時みなさんにお知らせしていく予定です.なお,6月1日から以下の表1のようなジョブクラスの変更がスケジュールされています.
表1 新しいジョブクラス割り当て(6月1日から、赤字が変更)
job class
CPUTime
Limit
Run Time
Limit
Memory
Limit
MPP
Limit

Run
Limit

User
Limit
excution
host
A
3H
-
16GB
4
2
1
eic
B
-
600H
8GB
1
4
1
eic

C

-
200H
32GB
4
5
2
eich
D
-
160H
32GB
8
4
2
eich
E
-
140H
32GB
16
4
1
eicp
F
-
100H
64GB
32
停止中
eicp
・EIC計算機システムの利用法
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/start/
・EIC計算機でのプログラミング,コンパイルおよび並列化
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/prog/
・プログラム移行上の注意
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/porting/
・ インテルコンパイラマニュアル
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/compile/
・ IMSL利用マニュアル
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/imsl/
・ GMT利用マニュアル
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/gmt/
・三次元動画作成表示システムの利用法
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/manual/lx/3d/