地震波は媒質境界で何度も反射・屈折を繰り返しながら伝わります.また,柔らかい堆積層に覆われた地表下では地震波が強く増幅され,長い時間揺れが続きます.このような3次元不均質媒質中の地震波動伝播のシミュレーションには,差分法や有限要素法などが良く用いられますが,同時に計算から求められた4次元波動場(3次元空間*時間)の膨大なデータを適切に処理(可視化)する道具も必要になります.
Earth Clipは,地震波動の数値シミュレーションで得られた4次元データを可視化するためのソフトウエアです.計算結果をVolume
Rendering法により3次元表示し,マウス操作で視点を動かしながら地震波の伝播する様子をリアルタイムに画面表示することができます.地震動を可視化するとき,その強さに応じた色と透明度をパラメータ(Look
Up Table)として与えることにより,揺れの一部を選択的に表示することができます. 例えば,振幅の小さな散乱波を消したり(大きな透明度に設定する),あるいは逆に強調したりすることが可能です.
境界面の位置や海岸線のデータをファイルから読み込んで,画像に重ねて表示することもできます.これにより,境界面で地震波が屈折・反射する様子をよく理解することができます.このようにして可視化した数十枚の画像を連続的に表示することにより,地震動の伝わる様子をアニメーション表示します.一般にVolume
Renderingの計算には多くの処理を必要としますが、Earth Clipではこれをハードウエアで実行することにより,リアルタイムに画像処理と表示を行ないます.左の図はEarth
Clip によるスナップショットです.