NEWS LETTER No.22



目次
ホームページ「津波高の予測」  阿部 勝征
首都圏強振動総合ネットワークのホームページの紹介  鷹野 澄
「EIC計算機システムの利用法」講習会報告  鶴岡 弘
最新地震カタログ情報 鶴岡 弘
eic(SGI Origin 2000)計算機利用状況  鷹野 澄




ホームページ「津波高の予測」 

                  地震予知情報センター長 阿部勝征

 この4月にセンター長に就任しました.微力ながらも職責を全うするよう努力いたす所存ですので,よろしくお願いいたします.1年後には大型計算機の機種更新が控えております.

 さて,今年の地震研の一般公開では実行委の依頼を受けて,「津波を知る」と題して公開講義を行います.9年前の第1回では「地震を知る」という話をしました.

 津波予報の問題は,地震の直後何分かの間に集中します.この数分が,被害を防ぐ 決定的に大事な時間となります.気象庁は,津波がきそうなとき,県単位程度に地域 を細かく分けた予報を出すため,津波の数値シミュレーションに基づいた量的な予報 19994月から始めました.つまり.○○県何メートル、××県何メートルという ような,津波高の予報です.このための気象庁量的津波予報検討会には当センターか ら菊地さんと私が参加して,技術的な問題点を検討しました.新しい量的予報は,津波を起こすような大地震が起きていないために実際にはまだ適用されていません.

 私は研究用として,簡便な予測方法を研究室で試みています.以前に津波高から津 波マグニチュードを求める式をつくりました.この計算式を逆に用いると津波マグニ チュードから予測高を算出することができます.津波マグニチュードと地震マグニチ ュードとは,すでに関連づけられ,ほぼ同等と見てよいことから,特殊な津波と判断 できる場合を除いて,地震マグニチュードをそのまま用いるのです.実際の計算には マグニチュードの種類や津波の地域性を考慮にいれなければなりません.これらはパソコンに組み込めるので,実質的には地震の震央とマグニチュードだけを入力すれば,すぐに予測高をはじき出せます.

 このたび,当センターの山中さんと共同で,ホームページを通して津波高を計算で きるようにしました.震央が太平洋側か日本海側か,それとも津波を起こさない内陸かを自動的に判断するように工夫してあります.たとえば,この方法を日本海中部地 震津波に適用すると,最大高は14mと予測され,「最高10mの高さに達するほどの津波」というような判断ができます.実際の最大高は13.8mでした.

 迅速な津波高の予測はその精度を上げてきていますが,地形による影響の細かなところまでは,なかなか予測できません.そこに限界があることも,承知しておかなくてはなりません.津波の予報には,かなり不確かさがあるのです.

 「津波高の予測」をホームページで公開したのは,知る機会の少ない津波の性質を一般のかたに理解していただきたいというねらいからです.これを利用すると,震央やマグニチュードが違うと津波の高さがどう変わるのかなどを勉強できます.このホー ムページは当センターの次のところにあります.

http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/index-ja.html



首都圏強震動総合ネットワークのホームページの紹介
   (http://www.sknet.eri.u-tokyo.ac.jp)
昨年3月のニュースレターNo.16で紹介した、首都圏強震動総合ネットワークのホームページができましたのでご紹介します。このホームページのURLは表題のとおりです。現在までのところ、東京都(区市町村)、東京消防庁、神奈川県(温泉地学研究所)、横浜市、埼玉県、地震研の強震観測網などの震度計や強震計の波形データを収集し公開しています(千葉県についてはまだデータが未入手です)。以下簡単にその内容を紹介します。

有感地震の最大加速度マップの表示

 図1 有感地震の最大加速度マップ

 まずホームページから「地震情報」を選ぶと、今月の有感地震情報がリストされます。ここでは、気象庁の有感地震情報のメールをもとに、首都圏で有感であった地震を表示しています。過去の有感地震についても当該月を選べば表示されます。 
 このリスト上の地震を選ぶことによって、その地震の最大加速度マップを見ることができます(図1)。ここで、観測点でトリガーされていない場合や、データが未収集の場合は、その観測点は白抜きで表示されていますので注意してください。特に、オフラインでデータ収集を行っている埼玉県や千葉県の場合は、データ収集までに1年以上かかることがあります。

各観測点の波形や応答スペクトル、SI値の表示

 ここで「波形をみる」を選ぶと図2のように各観測点における波形データを見ることができます。各観測点の加速度波形記録から、速度波形記

図2 各観測点の波形、応答スペクトル、SI値

録、変位波形記録、速度応答スペクトルを作成し、加速度、速度、変位の最大値とSI値(スペクトル強度)を表やグラフで表示しています。画面では少しはみ出ていますが、プリンタにA4ヨコでプリントするとちょうど1枚に収まると思います(余白を0に調整するといいかも知れません)

観測点の情報をみる

 最初のホームページに戻って今度は、「観測点情報」を選ぶと、図3のような各観測点の所在地の地図と使用している震度計などのセンサー特性を見ることができます。

図3 観測点と地震計の情報

今のところまだ以上のようなものしか公表していませんが、今後さらにデータが集まれば、首都圏における強震動生成メカニズムの解明と強震動予測、地震防災などの研究を推進し、その成果を適時公表していきたいと思います。 


「EIC計算機システムの利用法」講習会報告
Origin2000を中心にしたEIC計算機システムについて,昨年度と同様に講習会を実施しました.今回の講習会はこれからEIC計算機システムを使いたい人を対象としたコースで,5月17日(木)に実施しました.
講師は情報センターの鶴岡とSGI・SEの金が務めました.講習会の内容は,http://eic.eri.u-tokyo.ac.jp/headstart_manual/ に沿って
1.情報センターシステムの利用の仕方 2.Origin2000について
3.eicのバッチジョブNQEとその利用法 4.コンパイラとその利用法
5.並列化 6.数値計算ライブラリとその利用法
7.フリーウェアとその利用法
でした.講習会では,ノートPCを用いたデモなども取り入れました.

講習会への参加人数は16人でした。そのほとんどが新入生で,こちらの期待通りの講習会となりました.また,EIC計算機システムの利用法は,
http://eic.eri.u-tokyo.ac.jp/
http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/computer/
で随時更新していますので,そちらを適宜ご参照ください.
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最新地震カタログ情報

http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp/db/index-j.htmlで利用できる地震カタログの最新情報です.

JUNEC(全国地震観測網地震カタログ) Up 
 収録期間:1985/07/01〜1996/12/31;
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/junec/hypo/

NIED(防災科学技術研究所地震カタログ Up  
 収録期間:1979/07/01〜2000/06/30;
 データ元:http://www.bosai.go.jp/center/kanto-tokai/data/index.html

JMA(気象庁地震カタログ)  
 収録期間:1926/01/01〜1997/09/30;
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/geppo/

JMA(気象庁一元化震源データ) Up
 収録期間:1997/10/01〜2000/12/31;
 データ元:ftp://ftp.eri.u-tokyo.ac.jp/pub/data/jma/mirror/JMA_HYP/  
 *このデータの利用については,ニュース レターNo.9もごらんになってください.

HARVARD(HARVARD大CMT地震カタログ)Up  
 収録期間:1977/01/01〜2001/02/28;
 データ元:ftp://128.103.105.101/CMT/

ISC(ISC地震カタログ)Up
 収録期間:1964/01/01〜1996/12/31;
 データ元:ISC Catalogue 1964-1996 (CD- ROM)

システムおよびデータに関する質問・要望等はtsuru@eri.u-tokyo.ac.jpまでお願いします.


eic(SGI Origin 2000)計算機利用状況

昨年は、eic(Origin 2000)のCPU利用状況が一昨年度の約2倍となり予想を大きく上回る大幅な伸びを記録しました。一昨年と昨年の月別CPU利用時間を図1に示します。昨年のニュースレターNo.17の「今後の需要増にも十分応えられるでしょう」との楽観的な見通しはもろくも裏切られてしまいました。
 図1には今年度の4月と5月の利用時間も載せましたが、すでに5月はこれまで最高の93%に達しています。もはや、今後の需要増には応えることができないでしょう。(でも次の機種更新までまだ2年もあります)

EIC Origin 2000 利用状況

図1 Origin 2000の月別CPU利用時間

 図2に月に1回以上利用した実利用者数を示します。このうち、月100時間以上CPUを利用しているパワーユーザは大体20人前後で図2に見られるように年間を通じて大きな変動はありません。一方図にはありませんが、月1000時間以上利用している大口ユーザが毎月6〜10名ほどいます。こちらの方は、今年4月から若干増加しており、それが今年4月からの利用増になっているようです。
 こんな状況ですから、すでに利用者の皆様には多大なご迷惑をおかけしていると思います。今後さらに混み合うことが予想されますので、お互いに譲り合ってご利用頂きますようよろしくお願
いします。特に大口ユーザの方は、たくさんCPUを使ったら少し長めの休息をとって頂くなどのご協力をお願いします。


図2 Origin 2000の月別実利用者数

 図3は、最近6ヶ月の日別メモリ利用状況です。12月に48GBに増設しましたが実メモリの使用率はピーク時100%に達しています。メモリをたくさん利用する場合は、メモリの空き状況を確認しながらご利用頂きますようお願いいたします。

図3 Origin 2000の日別メモリ使用料(GB)

 ご意見,ご要望がありましたら,
  eic_staff@eri.u-tokyo.ac.jp
までお願いします.