EIC地震学ノート No.152
Sep 05, 04
Sep 09, 04 改訂
Sep 11, 04 改訂
◆遠地実体波解析(暫定解)◆ --------------------------------------
9月5日の紀伊半島南東沖の地震(Mj6.9, Mj7.4, Mj6.4 + Mj6.2)
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● 概略・特徴: 9月5日19時7分(日本時間),紀伊半島南東沖でMj6.9の地震が
発生しました。奈良県や和歌山県で震度5弱を記録するなどかなり広い範囲で地震
を感じました。津波も発生し,神津島では0.5m,南伊豆0.4m,室戸0.3m,串本0.3m
を観測しました.その約4時間後にほぼ同じ場所でさらに大きな地震(Mj7.4)が起こ
りました.この地震による津波は串本で0.9m, 神津島0.8m, 南伊豆0.7m, 尾鷲0.6m,
室戸0.5mでした.
気象庁による震源は次の通りです.
発生時刻 震央 深さ M
A: 04/09/05 19:07 (JT) 33.03°N 136.80°E 38 km 6.9
B: 04/09/05 23:57 (JT) 33.14°N 137.14°E 44 km 7.4
C: 04/09/07 08:29 (JT) 33.21°N 137.30°E 41 km 6.4
●データ処理: IRIS-DMCから収集した広帯域地震計記録を用いて解析しました.
●結果: 結果を図1(地震A),図2(地震B),図3(地震C)に示します。
主な震源パラメータは次のとおりです.
EVENT | 地震A | 地震B | 地震C |
走向、傾斜、すべり角 | (71, 56, 75) | (320, 57, 115) | (266, 50, 99) |
地震モーメントMo | 9.8x10**19 Nm | 1.8x10**20 Nm | 1.1x10**19 Nm |
Mw | 7.3 | 7.4 | 6.6 |
破壊継続時間(主破壊) | 16 s | 30s | 13s |
破壊開始点の深さ | 15 km | 13 km | 25 km |
食い違い Dmax | 3.9 m | 5.7 m | 1.3 m |
●解釈その他:1944年の東南海地震の近くで起こった地震です.はじめに点震源
を仮定してメカニズムを求めました.震源が南海トラフの近くなので低角逆断層
の地震か?と思いましたが,かなり高角の断層面をもつ逆断層地震です.低角
逆断層では説明がつかないことから,プレート内地震だと思われます.
2つの節面のどちらが断層面かはこの解析からだけでは判断がつきませんが,
多少波形の一致はいい方をとりましたが,決定的なものではありません.
現在海底地震計を設置し余震観測が始まったので今後断層面の形状も明らかになる
と思います.
この場所ではこれまでほとんど大きな地震が起こっていませんでした.今回の地震は
場所,メカニズムともこの地域では珍しい地震でだったと言えるでしょう.下図は
今回求められたすべり分布と気象庁による余震分布です.海域のため余震の震源
位置の決定誤差は多少大きいものと思われますが,比較的すべり分布とよくあっていて
これまで言われているように大きくすべった領域の周りで余震が起きているように
見えます.
本震のすべり方向をみると左横ずれ成分が含まれています.
気象庁によると
北部で起こっている余震のメカニズムは左横ずれだそうで,今回の解析結果と
一致します.
この付近はかつて海底構造探査が行われたところです.どのようなメカニズムで
これらの地震が起きたのか,それを解く鍵が見つかるかもしれません.
3つの地震のすべり分布.地震A,Bについては1.5m以上すべった領域を0.5m間隔で,
地震Cについては0.6m以上すべった領域を0.3m間隔で,地震Dについては0.3m以上
すべった領域を0.3m間隔でコンターをひいた.★はそれぞれの破壊開始点である.
小さな赤丸は気象庁一元化震源による余震分布(10日まで).
黄色のコンターは1944年東南海地震の時のプレート境界でのすべり分布(山中,2004)
(文責:山中)
◆追記1:阿部によると前震はMt = 7.2,本震はMt = 7.4でした。
◆追記2:9/8 23:58ころにMj6.2の余震(地震D)が起こりました.[04.09.09]
◆追記3:本震の波形を見ると,メインな破壊が来る前になんらか小さなイベントが見えます.どうも本震が起こる約13秒前に小さなイベントが起こっていたようです.そのためこの解析では13秒ほど破壊開始時間をずらしました.[04.09.11]